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ホテル清掃日誌

清掃会社の人間が日々思ったことを書いています

メイドの給与体系

 しばらく忙しくしていたので更新が滞りました。

 さて、今回はホテル清掃の客室清掃スタッフ(メイド)の賃金形態について書いてみたいと思います。この業界のメイドの賃金形態は大きく分けて2種類あります。

  • 時給制
  • 歩合制

 まず①の時給制ですが、これは一般のアルバイト・パートと同様で、例えば時給1,000円なら「勤務時間×1,000円=給与」となる形です。働いた時間分だけ給料がもらえるので非常にわかりやすいと思います。

 ただ、ここで注意が必要になってくるのですが、求人広告では「時給○○円」と謳っていてもそれを額面通り受け止めてはいけないということです。というのは、会社や現場によっては一人が一日に清掃する部屋数が「ノルマ」として設定されており、決められた時間までにその「ノルマ」をこなすことができないとそれ以降はタダ働きをさせられるということもあります。もちろんこれは明らかな労働基準法違反ですが、サラリーマンのサービス残業と同じくこの業界ではこのような違反が横行しています。

 私の会社では「ノルマ」の設定はやっていませんが、これをやる清掃会社の気持ちも分からないでもないです。ホテルからもらう清掃単価は1部屋清掃していくらという計算なので、メイドの給与が時給制の場合は1部屋の清掃に時間がかかればかかるほど会社の利益は少なくなり、下手すると部屋を多く清掃すればするほど赤字になるということにもなります。そうなるとメイドには少しでも早く清掃をしてもらわなければなりませんので、「ノルマ」を設定し、赤字にならないようにするために設定した時間内で終わらなければサービス残業をさせるというやり方になっているのでしょう。

 次に②の歩合制ですが、部屋の広さや設備などによって1部屋清掃するごとにメイドがもらえる金額が決められていて、1日に清掃した部屋数×その金額で給料を計算する方式です。このやり方ならば上記の時給制のようにメイドの清掃が遅くても部屋単位で考えた場合は赤字になりません(その他の経費があるので全体では赤字になることもあります)。

 数をこなせばその分だけ給料が多くなるので、出稼ぎ目的の外国人メイドなどにはこのシステムが好まれますが、清掃の遅い人は歩合制だと給料が少なくなってしまい、場合によっては時給で計算した場合の最低賃金に満たない場合もあります。それを防ぐために「ノルマ数までは時給でそれ以上の数を清掃すると歩合」とか、「1日の最低保証額が決まっている」といった形にしているところが多いです。ただ、この方式でも最低保証額は実働時間に関係なく一定時間分の最低賃金で設定されており、ノルマを終わらせるのにそれ以上時間がかっても給与は変わらず時給計算では最低賃金未満の給料しかもらえないというところもあります。これも完全に違法ですが、残念ながら当たり前のように存在しています。

 ちなみに、上記のような労基法上の問題を堂々と無視するために、メイドを個人事業主として扱い、個々のメイドと業務請負契約を結ぶという形にしているところもあると聞いたことがありますが、会社の指揮下で業務を行うことになるので偽装請負に当たり、これも違法です。

 他にも労基法入管法などに違反したことをやっている清掃業者は多数ありますが、ほとんどのホテルの方はこういう違法な状態が横行していることに関しては基本的に見て見ぬふりをします。世の中そんなものです。

 清掃業界に関係のない方には縁のない話かもしれませんが、きれいなホテルの部屋に安く泊まれて快適に過ごせるということは、こういうブラック企業で働く人達の犠牲の上に成り立っているということを知っておいていただけたらと思います。

 もちろんちゃんと関連法規を遵守して真面目にやっている会社もありますが、私の経験上はそんなホワイトな会社は一握りだけです。

 

契約更改と人手不足

 プロ野球の契約の契約更改はとっくに終わっていますが、ホテル業界の契約更改は今が旬です。日本の商習慣に従って多くのホテルでは毎年4月が清掃業務の委託契約の更新時期に当たります。ホテルによっては3年間や5年間という長期契約のところもありますが、近年は1年ごとの更新が多くなりました。更新は基本的には自動更新なのですが、更新に合わせて契約内容の見直しや、委託業者の変更が行われることもあります。

 契約内容の見直しとしては主に業務内容の変更や清掃単価(1部屋清掃したらもらう金額)の変更があります。業務内容の変更というのはほとんどの場合は清掃業者が行う業務の範囲が増えることで、これまではホテル側でやっていた業務の一部を清掃業者にやらせてホテルが楽をするということです。業務が増えた分だけ追加料金をもらえるところもありますが、お値段据え置きのまま仕事だけが増えるということもあります。

 

 一方、清掃単価はリーマンショック以降は下落が続きましたが、ここ数年はホテル業界の業績回復と人手不足と賃金の上昇もあって、清掃単価は回復傾向にあります。ただ、それでも社会情勢の変化に追いついていないのが現状です。ここ5年で東京の最低賃金は95円上がっているにも関わらず、清掃単価の上昇が追いついておらず、メイドに支給する給与の引き上げも進んでいません。

 人手不足がピークだった去年は首都圏ではメイドの求人で時給1000円~1100円というのもよく見かけましたが、清掃単価があまり上がっていないのにそんな時給で採用すると赤字になることは目に見えており、最近は時給950~1000円ぐらいに落ち着いてきた印象があります。

 もちろん、どの業界も人手不足なのに、この肉体的に超ハードで精神的にも神経を使うメイドの仕事が時給950~1000円では人が集まるはずはなく、その結果この業界は深刻な人手不足に陥っています。問題の深刻さを理解している一部のホテルは契約更新の時に清掃単価に引き上げに応じてくれていますし、本当にわかっているところは「今回清掃単価上げて良いですからね」とまで言ってくるところもありました。しかし、多くのホテルはなぜ人が集まらないのかを理解していないので問題の深刻さをわかっておらず、清掃単価は据え置き、もしくは小幅な引き上げに終わることが多いです。

 また、近年はホテルリートなどの投資法人がホテルの所有者になっているケースも増えており、そういうホテルはコスト重視の傾向がより一層顕著ですので、清掃単価の引き上げ交渉は容易ではありません。東京オリンピックを控え首都圏ではホテルの新規オープンや改装が相次いでおり、訪日客の増加によるホテル稼働率の上昇など景気のいい話しか聞こえてきませんが、清掃業界の人間は「そんなにホテルを増やしても清掃する人がいないのに何を考えているだんろうか」と冷ややかな目で見ているのが実情です。

 実際、全国展開するホテル清掃業界大手の某社が都内のホテル清掃の現場から完全に撤退するという噂を先日耳にしました。人手が足りず、人件費や募集経費にばかりコストのかかる都内の現場から撤退し、関西や名古屋など人手不足がそこまで深刻でない地域に注力するということです。賢明な経営判断だと思いますね。当社もここ数年は新しい現場の依頼があっても全て断るようにしていますし、この状態が進めば本当にホテル業界は崩壊すると思うのですが、現場を知らない偉い人にはそれがわからないんですよね。

 

アラブの王様

 最近サウジアラビア国王御一行の来日がニュースになっていました。随行員の方はうちの会社が清掃やっているホテルにも泊まっていましたが、下っ端の人たちだったようで業務自体にはあまり影響はありませんでした。ただ、多数の関係者が都内のホテルに分散して宿泊していたせいで、都内や横浜のホテル全体の稼働率が高かったような気がします。

 

 ちなみに、私は以前、某迎賓館の接遇業務に関わったことがあり、某アラブの国の王様の接遇を経験したことがあります。非常に我儘で気まぐれな人たちで、香水臭もきついので大変でしたが、さすがお金持ちだけあって気前も良かったです。

 

 滞在中に王様の側近がホテルの担当者を呼び、「君たち何人いるの?」と訊かれたのでその時いたスタッフの人数を答えたところ、「じゃこれみんなで分けてね」と言って1万円札を人数分ポンと出してくれたそうです。メイドの分もちゃんとあり、全員が1万円ずつもらいウハウハでした。

 

 というわけで、今回のサウジアラビアの王様御一行の来日のニュースを見ながら、チップを気前よくバラまいているだろうから担当している清掃会社の人が羨ましいなぁと思った次第です。

想い出の臭い

 月末・月初の事務作業に追われてしばらく更新できていませんでした。春休みになればまた忙しくなるのですが、その前に一息つけるかなというのが今の状態です。

 

 2月は私自身はそこそこ忙しかったのですが、全体的な稼働率はイマイチで、私の担当エリアの売上も近年稀に見る低さでした。前にも書きましたが、こればかりはホテルの稼働率次第なのでどうしようもないのですけどね。

 

 さて、ここまで客室の臭い対策について書いてきましたが、ここで私の想い出に残っている強烈な臭いのエピソードをいくつかご紹介したいと思います。

 

 まず、食品系の臭いで真っ先に思い浮かぶのが、本格的な包丁セットと大きな木製のまな板を持ち込み部屋で魚を捌いていた人。捌いた後の魚のアラがずっと部屋にあったので、部屋中に生臭い臭いが充満し、その日はその部屋を販売することができませんでした。しかも、クローゼットの引き出しの中に包丁とまな板を忘れていくというおまけ付き。思わず、「持ってきたならせめて持って帰れよ!」と叫んじゃいましたね。

 

 料理といえば、電気式のフライヤーを部屋に持ち込み揚げ物をしていた外人もいましたね。それも、臭いが籠もるから部屋の入口のドアを全開にして。廊下中に揚げ物の臭いが漂っていました。で、フロントに伝えて注意してもらったら、「揚げ物なんてやっていない」とシラをきるんですからね。ふてぶてしいにもほどがあります。

 

 香水系の臭いで想い出に残っているのはアジアサッカー連盟の理事として来ていたアラブの王子様御一行とミス・インターナショナルに出場する各国代表の女性たち。皆さん湯水のように香水を使っていて、ステイ清掃のため部屋に入るだけで頭が痛くなりました。もちろんチェックアウト後も臭いが残っていたので数日は部屋が販売できませんでした。

 

 最近経験した一番強烈な臭いは外国人の体臭ですね。ワキガなのか鼻がひん曲がるような体臭と、それを消すためか香水も大量に使用しており、体臭と香水臭が混ざった臭いはまさに窒息しそうなレベルでした。間違いなく私のキャリアで最悪の臭さでした。チェックアウト後の消臭も大変で、何しろ室内に3分いたら目眩がしてくるんです。「俺はウルトラマンかよ!」と一人でツッコミながら、3分おきに廊下に出て新鮮な空気を吸って深呼吸をして、また部屋に戻って消臭作業をするというのを繰り返しました。それでもこの部屋は臭いが取れず、3日間販売することができませんでした。

 

 以上、私の想い出の臭い特集でした。

 

終わりなき戦い:消臭編その3

 さらに消臭編の続きです。これまで書いてきたように消臭剤のスプレーやオゾン脱臭機などで臭いが取れれば良いのですが、強烈な香水臭やタバコ臭などそれでも取れないような臭いは臭いの元から断つという方法が必要になります。

 

 まず、香水臭の場合ですが、部屋の換気と平行して、臭いの発生源を特定し、そこに付着した臭いの元(香料)を洗剤などを使用して拭き取るという作業が必要になります。ただ、この臭いの元を探すのが結構難しく、部屋の中で鼻をクンクンして臭いを嗅ぎ回るしかないのですが、警察犬ならいざしらず、私のような普通の人間の鼻ではさっぱりわからない時もあります。そういう時はベッドルームやバスルームの鏡の前やベッド周りなどゲストが香水を使いそうな場所を手当たり次第拭き上げ、臭いを薄くしていくという方法しかありません。

 

 余談ですが、奥の手として希釈した塩素系漂白剤(ハイターなど)を臭いの元に吹き付けて拭き上げるという方法があります。臭いの元さえ特定できればだいたいこれで解決するので、私は急いでいる時などはこの方法を使うのですが、ハイターを使いすぎると独特の嫌な臭いが残ってしまうので他人にはあまりオススメはしません。

 

 換気や消臭剤の噴霧でも取れない強烈なタバコ臭の場合は、特定の場所に臭いの元があるというよりも部屋全体に染み付いていることが多く、壁や家具などに洗剤や消臭剤を吹き付けてから拭き上げて臭いを除去するということになります。非常に地道な作業です。長期滞在のヘビースモーカーのゲストがチェックアウトした時などは寝具やカーテンにも臭いが染み付いているので、そういう場合はそれらもクリーニングに出す必要があります。カーペットに臭いが染み付いている場合はカーペットシャンプーも必要になります。

 

 中には喫煙者なのに部屋のタバコ臭が気になるという人もいますが、基本的には喫煙部屋でタバコ臭がするのは当然なので、喫煙部屋はそこまで完全に除去しなくても構いません。しかし、禁煙部屋でタバコを吸われた場合はもう最悪で、臭いがひどい時には上記のように寝具やカーテンもクリーニングに出すので数日間その部屋を販売できないということになります。ホテルによっては「禁煙室で喫煙した場合は罰金を徴収します」と書かれたメッセージを部屋にセットしているところもありますが、それでも吸う人は吸いますし、実際に罰金を請求することはほとんどありません。私は非喫煙者なので、禁煙部屋でタバコを吸う人の神経が理解できないのですが、残念なことに世の中にはそのような自分勝手な人がたくさんいるという事実があります。

 

 また、予約の関係上で禁煙室が足りなくなった場合、喫煙室を消臭して禁煙部屋として販売することもあります。その場合もタバコ臭を完全に除去しなければならないので、非常に面倒です。

 

 毎日の消臭作業の手間を軽減するために室内にセットするタイプの消臭機器を導入しているホテルもあります。その中で個人的に目にする機会が多いのはイオンアトマイザーでしょうか。

www.airnote-sc.com

 このイオンアトマイザーは部屋や廊下の壁の上部などに設置して、アロマの香りを発生させることにより室内の悪臭を軽減するというものです。それなりに効果はあるのですが、問題がいくつかあり、まずタバコ臭には効果がありますが香水臭などにはほとんど効果がありません。

 

 また、中の消臭剤がなくなったらカートリッジを交換しなければならないのですが、このカートリッジはそこそこ良いお値段になっています。そのため、業者からの売り込みがあってサンプルを導入してみたのはいいけど、カートリッジが高くて買えないので消臭剤が切れたらそのままというホテルが結構多い気がします。

 

 ちなみに、最近はどこのホテルも喫煙フロアを減らす傾向にあり、ホテルによっては全室禁煙なんてところもあります。しかし、世の中には一定数の喫煙者がいるわけで、中にはタバコを我慢できない人もおり、禁煙室の割合が増えるほど禁煙室での喫煙が増え、清掃会社は消臭対応に追われるということになります。偉い人にはそんなこと関係ないからどんどん禁煙室の割合を増やしていくのでしょうが・・・。